『紫苑の空』





学校の朝というのは決まってだるい。
たとえ欠伸を噛み殺してみても、結局それは無駄な努力。睡魔に負けるのは時間の問題。
「―――――」
そう。
まるで教師の言葉が呪文のように、俺を眠りの園へ誘う―――――。

びりっ。
「―――――っ!!?」
そんな寝ぼけた身体に、突如走る電流のような感覚。
つま先から脳内まで、余すところなく。

「志貴。朝から惰眠を貪るのはどうかと思いますが」
「………だからって、エーテライトは反則。勘弁してくれ、シオン…」
「ですが、最も効率的ではありませんか?神経に直接作用するのですから、抗いようがありません」
「……………そうだけど、なんかすごく間違ってると思う」
「………ふぅ」
シオンは文句を呻く俺をつまらなさそうな目で睨み、またノートにペンを走らせる。


そう。
そもそも、この光景自体がすごく間違っている。


何故シオンが、俺の学校にいるのか。


◇  ◇  ◇


遡れば、アレはタタリの事件から数日が経った頃だった。

「志貴。明日から貴方の学校に通うこととなりましたので」

………シオンがいつも通り、冷静にそうのたまってくれやがったのは。


正直に言うと、俺は事の詳細を一切知らない。というか、教えてもらえない。
俺に知らされたことはと言うと、
シオンが俺の学校に転入生として来ること。そして俺と同じクラスに配属されること……このふたつくらいだろうか。

ただ、俺はそれなりに裏事情を推測している。そしてそれは結構アタっているだろうと自負している。
その俺の推測というのは、非常にシンプルそのものだ。

―――――裏で糸を引いているのは、すべて秋葉だ。
そう考えればなんの疑問もない。実に分かりやすい答え。

仮にそうだとしたら、シオンがここに来た最大の理由、それは恐らく俺の監視役としてだろう。
………確かにシオンは、そういう役割が悔しいくらいに適任だと思う。
常に冷静で隙を見逃さない。そして隠し事は隠せない。

そうなると………アルクェイドやシエル先輩とも会いにくくなる、な。
あの鬼妹の、血のように真っ赤な檻髪の餌食になるのは、何としてでも避けたい。うう、思い出しただけで寒――。

びりっ。
「〜〜〜っ…!」
「手が止まっていますよ、志貴。何を呆けているのですか?」
悶絶する俺をよそに、シオンは涼しい顔でカリカリとノートにペンを走らせている。
「………」
一言だけでも、言ってやりたい。それはもう怒鳴るくらいの勢いで。
ただ…情けないことに、それがまったく出来そうにないのは、果たして何によるものだろうか。
「――まったく……」

とりあえず、分からないことを考えたって仕方ない。
そう観念した俺は、いちおうマジメに授業を受けることにした。


◇  ◇  ◇


「―――ふぅ。もう昼休み、か…」
授業時間は意外にもあっさりと片付いた。
勉強でも集中すればこんなもの、ってところか。ははは。
「さーて…」
教室内をきょろきょろ見渡す。
有彦は………どうもサボり、らしい。
なるほど。だから今日はあんなに静かだったんだ、とひとり内心で納得する。

さて、そうなると。
シエル先輩と茶道室で食べるか、ひとりで学食かって選択…………―――――じゃない。

「シオン。昼メシ、中庭でも行くか?」
「っ!」
横で机に突っ伏しそうになっているシオンに声を掛ける。
………やはり変化してしまった身体では、日中の活動は苦しいのだろう。
ぜいぜいと、とても苦しそうな呼吸が微かに聞こえる。
―――教室の中だから日差しはないかと思いきや、窓際の席では燦々と陽光が照りつけていた。

「………訂正。裏庭なら日陰があるだろうから、そっち行こう」
「―――――はい」
「よし、決まり。シオン、一人で歩けるか?」
「……心配には及びません、志貴。これくらいなら、慣れて、ます」
突っ伏していた身体を起こして、シオンは俺を見る。
その瞳は、心配なんて不要だという、強い瞳だった。


―――――ばか。と、言おうと思ったけれど。


「………」
「ひゃ―――!?」
黙ったまま強情な手をひっ掴まえて、裏庭までさっさと行くことにした。

………裏庭までの他人の視線が痛かったのは、まぁ、なかったことにしたい…。


◇  ◇  ◇


「―――はい、到着」
「―――――」
裏庭に着いたというのに、シオンは何故かぽけーっとしている。
………エーテライト使ってみたいなぁ、なんて思ったのは死んでも言わないほうがいいか。
「シオン、大丈夫か?」
「―――あ、はい。別に、異状はありません」
呆けていたシオンは、まるでスイッチを切り替えたように、いつもどおりに戻る。
その切り替えの見事さはさすがだなぁ、とちょっと感心してしまう。

そして元に戻ったシオンは、持っていた鞄をゴソゴソと漁って………何か見覚えのあるものを取り出した。
赤い、ビニールのパック―――。
「それって、秋葉の?」
「はい、彼女から分けて頂いたモノです。
 研究は捗っているのですが、まだ解決には至っていません。だからこうして………」
「あぁ、そのへんは理解してるつもりだ。いいよ、気にしない」
紙パックのコーヒー牛乳にストローを挿し、ちゅーちゅー吸いながらそう返す。


そう。
シオンは生き方が少し変わってしまっただけの話。
人間らしさは以前のまま。人を襲い血を吸うこともない。

だから、いいんだ。
人間だったころと、何も変わらない。変わらないんだ。


「………それはそうと、シオン。いい加減教えてくれないか?」
「何をですか?」
―――バシンッ、という擬音が聞こえそうなほどの、鋭い返事。
……ここまで拒絶を感じると、俺も素直に尋ねにくくなる。
確かにもう何回も聞いてるから、いい加減うんざりかもしれないけど………聞かないワケにいかない。

「シオンがここに通う理由。いい加減に教えてくれ、このままじゃ夜も寝れそうにない」
「………それは昼間にあれほど寝ているからだと思います」

―――うぐ。

「そ、それはそうかも…じゃない!なんだって教えてくれないんだよ、シオン」
「貴方に話す必要性が感じられないから、とでも言いましょうか」

―――言葉、一閃。こうまで言われて、どう戦えというのだろう。


仕方ない。コレがシオンに通じるとは思わないけど………。
「……………裏で、秋葉が糸を引いているんじゃないのか?」
「―――――」
ぴくり、と僅かに片眉が動いたのを俺は見逃さなかった。
これは、意外とイケるかもしれない。

ちなみに、こういう『カマをかける』作戦は、対秋葉への最高にして最後の手段。
アイツは面白いくらいにひっかかってくれるので、とっても愉快だったりする。

余談ではあるが、アルクェイドの場合は『メシ抜き宣告』でほぼ確実に折れる。
シエル先輩の場合は『カレーパン一個』だったり『メシアンに同行』だったり。どっちも効果抜群だ。
ただこう考えると、俺の周りで信用できるのは…翡翠………だけかもしれない。
あとは基本的におしゃべりだったり、油断ならない人だったりだからなぁ。

「………」
あぁ、それと目の前にいるシオンも信用がおけるうちのひとりだ。
………と、そういえば今は尋問中だった。よし、ちょっと気合入れて………。

「遠野の屋敷で下宿………いや、研究させてもらうかわりに、秋葉はシオンを学校に通うようにする。
 まぁ、理由は俺の監視ってトコじゃないか?俺の学校での生活態度、秋葉は知りようがないワケだし」
「……………」
「そうやって考えると、こんなムチャにも辻褄ってモンが通―――――」


―――言葉は最後まで紡げなかった。
   全身が凍る。それは意識のレベルではない。もっと、奥底。

理由はカンタンだ。


魔眼/それは、吸血鬼特有の、朱い眼による束縛。


「シ、オ――――――――っは、あ………!な、なんの真似だ………ッ?!」
「……………志貴………」
ギロリと、絶対零度の縦長な瞳孔が、俺を貫く。
それはまるで、狂気に身を委ねたアルクェイドを彷彿とさせる眼。

あぁ。
俺の推測は、どうやらシオンを本気で怒らせるモノだったらしい。
どうしたらいいだろう。身体の自由はあるが―――――あれ?う、動く?

「貴方は、本当に鈍いのですね。尤も……それが、志貴(あなた)らしさなのですけれど―――」
「え…?」

それは。
とても優しい声と、とても優しい瞳で。

「――――――」
そして何も言わずに、シオンは慄然と、踵を返した。

「……………………」

なんて不意打ちだろう。
さっきまでの緊迫感も何もかも、すべてが残暑の風に吹かれて。
俺はシオンが立ち去るその後姿だけを、ただ呆然と―――――。


「―――――まともな心配して、ソンしました」
「うわぁっ!!?」
突然、上から聞き慣れた声が落ちてきた。続けざまに、見慣れた人も降りてくる。
「………あの、シエル先輩。盗み聞きってよくないと…」
「む。私はただ教会の人間として、職務を果たしたに過ぎません」
むっとした表情で、シエル先輩はそう言った。
………それはまぁ、確かにそうかもしれない。だから一度は頷く。
「…でも、それってカレーパンをもぐもぐしながら言う台詞じゃないでしょ?先輩」
「―――彼女は大丈夫そうですね。一度、魔眼を発動した時はさすがに緊張しましたが」
………俺のツッコミを、先輩は綺麗にスルーした。
都合の悪いことはなかったことにする作戦……いや、これ以上の追求は我が身を滅ぼしかねない。
そう考えて綺麗になかったことにすると、シエル先輩は、急に真剣な表情で俺を見る。

「―――遠野くん。彼女が吸血種になったということは、どうあっても覆せない事実です。
 ……それだけは、どうか忘れないでください。貴方の身に何かあってからでは、どうにもなりませんから」

真剣な、けれど、どこか懇願するような眼差し。
そこに込められた想いを感じて、俺は素直に頷く。

「………そう、ですね。ご忠告感謝します。それと…彼女を見逃してくれていることも」
「ふふ。それじゃそのお礼、明日にでも頂きましょうか。明日のお昼、茶道室にいますから」
「あはは。それじゃ、お邪魔しますね。…っと、それじゃあ。俺も教室に戻りますから」

どこか間の抜けたチャイムの響く中、俺は教室へと足早に戻り始めた。


◇  ◇  ◇


―――――――眠い。

昼メシの後の授業というのは、本当に眠い。
幸い俺の座席は後ろの方、よって眠っても教師にバレることは稀だ。

だが、それも今では甘い考えになってしまった。
何故なら安眠の障害は教師ではなく、隣の席のシオンなのだから―――――。





「―――――!!」
バシンッ!!という音が自分の背中を叩かれたことによるものだと、背中に走る痛みが俺に伝える。
「って…ぇ………誰、だ…?」
ゆっくりと眠たいアタマを起こし、振り返る。

「あ………有彦?」
「いよーう、遠野くん。睡眠学習とはいいご身分じゃありませんか、ん?」
そこには、本日サボったはずの有彦がへらへらと笑って立っていた。

「………なんで、オマエがいるんだよ?サボりじゃなかったのか、今日?」
「そうだったんだけどよ………どこにいるよりも学校にいたほうが、安息のひとときを過ごせるって気付いたんでな…」
はぁ、とそうやって重いため息をつく有彦。なんだか顔が疲れてるのは気のせいか。
「…よく意味が分かんないけど………あ!?」
ようやくまともになったアタマで、ふと時計を見ると―――。

―――時計はあり得ない時刻を指していた。

「………午後の授業、終わって………る…?」
「―――今更気付きましたか、志貴。まったく…貴方がここまでだらしないとは思いませんでした」
間抜けな俺に、横から容赦のない零度の声が刺さる。
「……こんなに寝るなんて、俺も思わなかったよ。くそ、しくじったな…」
ぐ、と声を詰まらせつつ、自分に呆れたように呟く。

―――と。
いきなり、ぐっと首を絞められる。

「………遠野。この美人、誰?」

………何をバカな、と言いかけて止めた。
そういえばこのバカは学校をサボってばっかりだったから、シオンのことを知るはずがない。
「初めまして。私はシオン・エルトナムと申します。
 二日前からこの学校に留学生として転入してきました。あの、貴方が……乾さんですか?」
…いやってくらい生真面目に、礼儀正しく挨拶をするシオン。
この辺に秋葉と共通のモノが見える、なんて言ったらどんな反応をするだろうか。

「し、シオンちゃんか!!そうそう!俺が乾有彦!!これからよろしくな、ははは!」
一方、コイツの挨拶は礼儀なんて欠片もない…というか、コイツに礼儀を求める方が間違ってる。
「それで、シオンちゃん………なんで俺を知ってるんだ?」
「ええ、志貴から色々とお話を聞きましたから」
シオンは笑顔を浮かべて、そう、言ってしまった。

その時、俺は確かに聞いた。
―――ビシリという、亀裂の入るような、そんな音を。

「………シオンちゃん。ぶっちゃけ聞くけど、コイツとはどういう関係?」
「…その、詳しくは話せませんが…とりあえず、彼の家に厄介になっています」

―――ビキリという、亀裂の深まる音。

「………遠野くん、どういうことかなぁ…?」
「とりあえず、文句は却下な。成り行きだから、ぜんぶ」
タタリの事件なんて、話したところで分かるはずがない。だから俺はそうやって言葉を濁す。

……そんな俺に、有彦はこの上なく不信感を感じさせる目つきで。
「……………この、天然女たらしめ。シオンちゃん、コイツの毒牙にかからないようにな!」
と、やたら気合いの入った捨て台詞を残し、崩れるように席へ戻っていった。

「…毒牙とは随分な言い方だな、アイツ。俺はそんな真似してないってのに」

そう呟いて、いそいそと帰り支度を開始した。


◇  ◇  ◇


「―――そういえば、さぁ」
「何ですか?」

屋敷までの帰り道はシオンと一緒だ。茜色の帰り道に人影は少ないので、気楽といえば気楽。
「ほら、昼の授業ん時。俺、寝てただろ?」
「はい。それはもう、気持ちよさそうに熟睡してました」
「それだ」
「?」
「なんで起こさなかったんだ?午前中はあんなにもエーテライトを活用してたくせに」

そう、それが今日一番の疑問。
あんなにも居眠りを許さなかったシオンが、何故?

シオンは少し、間を置いて。
俺の顔を見ることなく、ぽつりと、理由を教えてくれた。

「……………ただの、気紛れです」
「き、気まぐれ…?」
「ええ…」

その回答に、俺は少なからず驚く。
まさかシオンから、そんな言葉が聞けようとは。
冷静沈着、必然と理論の体現者といっても過言ではない、あのシオン・エルトナム・アトラシアが。

「それよりも、志貴」
「へ?な、なに…?」
シオンな何かに気付いたらしく、俺の後ろを指差す。
その方向を振り返―――――。

「志ー貴ーっ!」
「どわぁっ!?」

―――ドガッ!!

それは最早タックルというレベルだ、と言いたいくらい強烈な抱きつき。
その犯人はもちろん、俺の知る限り一人しかいない。

「ってぇ………アルクェイドっ!危ないだろーがっ!!」
「〜♪」
タックルをぶちかましたばかやろうは、俺の怒りもまるで聞きやしない。
それどころか謝りもせずに、ネコのように擦りつく始末。
「―――あれ、貴女………シオンだっけ?なんで制服なんて着てるの?」
と、ようやくシオンに気付いたのか、訝しげに尋ねるアルクェイド。
その瞳はうって変わって、静か。
「ええ。私は今、志貴の学校に通っているのです」
そんな瞳に怖じることなく、きっぱりと冷静に返すシオン。

なんか、少しばかり険悪な感じに―――。

「えー!?なにそれ、ずるいっ!志貴、どういうコト!?」

………ならない、か。
さすがアルクェイド、と今回ばかりは褒めてあげたくなる。
「どういうコトって…、俺も知らないんだよ。シオンも教えてくれないんだ」
「―――それよりも、真祖。貴女は何用でここにいらしたのですか?」

さりげなくシオンに矛先を向けると、やはりシオンは逃げた。
けれど今はアルクェイドが―――――。

「あー、そだね。志貴っ!遊び行こっ!!」

ぎゅっ、と。
アルクェイドが、俺の手を引く。強く。

「………な!?ちょ、ちょっと待てアルクェイド!シオンから聞かなくていいのか!?」
「えー?そんなことより遊びに行きたいな、わたし」
…今度は俺の期待を見事に裏切り、はやくはやくー、と俺を急かす。
「…だそうです、志貴。それでは私は一足先に屋敷に戻りますね」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待てシオン!オマエ、秋葉に頼まれ――――」

その台詞を言い終わる前に、がしっ、と首根っこをひっ捕まえられた。

「ちょっと、志貴っ!今のどういうコト!?なんでこの女が志貴の家にいるの!?」
「そ、それは俺のせいじゃ…!」
「ふーん。これは徹底的に聞くしかないわね。いいわ、わたしの部屋に行きましょう」
「わぁ、ちょっとアルクェイド!し、シオン!」
弁解を聞こうともしないアルクェイドに、俺はたまらずシオンに助け舟を求める。

が―――シオンはすでに歩き出していた。
    こちらの様子など微塵も気にしてはいないと、その背中が確かに語っている。

「ふふふ…志貴、覚悟しなさいよ………」
「……………はぁ…」

問答無用で俺を引きずる吸血姫の一言に、俺は深い深いため息をついた―――――。


◇  ◇  ◇



坂道を一人歩く。
手には志貴に埋め込んでおいたエーテライトだけがある。

これを外したのは昼食の後、午後の授業の時。
あまりにも眠そうな彼が、必死に睡魔を堪える姿がただ可笑しくて。
そうして結局、睡魔に負けた彼の寝顔が―――使用人(ヒスイ)の言うとおり、あまりにも静かで。
………それを邪魔することは、私には出来なかった。

ふと、志貴の言葉を思い出す。私がこうしている、彼なりの推測を。

秋葉との約束というのは、志貴の推測したようなものではない。
ただ、当たらずも遠からず、というところではあるのだけど。


『私を志貴と同じ学校に通わせてほしい。その代わりに、私に出来ることなら何でもやる』


志貴は知らない。
秋葉が私を屋敷に置いていることは、彼女の好意によるものだと。
秋葉は兄の身を案じているだけで、私に厳しい監視を求めてはいないのだと。

私がこうしているのは、私自身の願望によるものだと。

彼はそれに気付くだろうか―――――いや、恐らくは気付くことなどないだろう。
それが遠野志貴という人なのだから。
彼は愛されていることに気付かない。本当に、周りからすれば可笑しなくらいに。


「本当に、気付かないんですよね………志貴(あなた)という人は」


気がつけば太陽も沈み、もうすぐ月が現れそうな………そんな、曖昧な紫苑の空。

その空の向こう。
今頃、真祖の寵愛を一身に受けているであろう彼に向かって。

そんな、なんの意味のない台詞を呟いてみた。



『紫苑の空』了.